キャベツは生で食べても火を通しても美味しく、和・洋・中とさまざまな料理のアレンジがきく、まさに万能な野菜。
1年中出回る定番野菜ですが、ぎっしりと葉が巻き、キャベツの甘みや香りをより楽しめるのは12月〜3月にかけて。春先まで品種を変えながら続く、まさにキャベツの味わいの旬が到来。ぜひこの機会に、おなじみのキャベツの魅力を再確認してみてはいかがでしょうか?
【目次】
ヨーロッパ生まれのキャベツは、地中海沿岸地方が原産地といわれ、ブロッコリーやカリフラワーと同じくケールを起源としています。
日本には約800年前に、葉牡丹のような非結球のキャベツが伝来。19世紀半ばの江戸末期には結球キャベツも伝来したものの、薬味やおろし大根などごく一部を除いて野菜を生で食べる習慣がなかったため残念ながら普及せず…。明治中頃に東京・銀座の洋食店が「カツレツ」に、キャベツのせん切りを添えて出したところ大好評。新しい食文化と共に普及し、各地で品種改良されて今に至ります。
本来キャベツは20℃前後の冷涼な気候を好む作物のため、平地では春と秋に旺盛に生育。そして夏の高温期になると平地から高冷地へ移動するなど、産地をリレーして栽培スピードの異なる品種を上手く組み合わせることで、周年供給を可能にしています。
キャベツの生産量ランキング(都道府県別)
順位 | 都道府県 | 収穫量 | 構成比 |
---|---|---|---|
1位 | 愛知県 | 262,300 | 18.3% |
2位 | 群馬県 | 256,500 | 17.9% |
3位 | 千葉県 | 119,500 | 8.3% |
4位 | 茨城県 | 105,800 | 7.4% |
5位 | 鹿児島県 | 72,200 | 5.0% |
データ:農林水産省「作況調査」(令和2年)
収穫のタイミング別に分けると春に収穫する春キャベツ(春玉)、初夏〜秋は夏秋キャベツ、12~3月の寒い時期は寒玉キャベツと呼ばれます。さらに形や質によって分けると、日本で食べられている約6割を占める寒玉、3割を占める良質、丸玉の3つのタイプに分類できます。
寒玉系は扁平な形で水分が少なく味が濃くて、葉の質が硬いことが特長。炒め物やお好み焼きなどの加工調理用にも使われます。
冬の寒い時期に成長したキャベツは、細胞が凍らないように糖を蓄えているので、なんとメロンと同じくらいの糖度!ポトフやロールキャベツなどの煮込み料理にすると、さらにその甘さを堪能できます。
良質系は甲高な形で、照りのある鮮やかな緑色の葉色が特長。水分を多く含み、柔らかい肉質のため、ジューシーな食感で生食にピッタリ。
グリーンボールとも呼ばれる丸玉タイプは、重さ1㎏前後で小ぶりのボール型。中まで緑色を帯びて肉厚で柔らかいので、浅漬け用としても人気です。
目利きポイントは葉が鮮やかな緑色。寒玉なら葉先が紫色のものは、寒さに当たって甘い証拠です。
また、巻きが硬くてずしりと重量のあるものが良品。芯は500円玉くらいの小さいもので、カット済みのものは芯の切り口が黒ずんでおらず、芯の高さが3分の2以下のものを選びましょう。
一玉購入したら、まずは芯をくり抜いて、水で濡らしたキッチンペーパーを詰めるのがおすすめの保存法。あとはビニール袋に入れて野菜室へ。
重なった部分から腐敗し始めるので、上に物を置くのはNG。カット済みのものはラップに包み、なるべく早めに食べ切ると良いでしょう。
含まれる栄養は、なんといってもキャベツから発見されたビタミンU(別名キャベジン)が有名。特に中心に近い黄色い葉に、多く含まれているといわれています。
細胞分裂を促進し、たんぱく質の合成を活性化させる働きがあるため、傷んだ胃の粘膜組織の修復や胃液の過剰分泌を抑えるので胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防や改善にも役立ち、多くの胃腸薬にも配合されています。
またビタミン類も豊富に含み、特に皮膚や粘膜の健康維持や免疫力を高めるビタミンCは、淡色野菜の中でもかなり多い100g中41mg。
他にカルシウムや食物繊維、うまみ成分のグルタミン酸や疲労回復効果が期待できるアスパラギン酸、酵素の生成成分のスレオニンなどのアミノ酸や機能性成分もたっぷりで、まさに優等生野菜。
年末年始のごちそうで少しお疲れ気味!?な胃にも嬉しいキャベツの力を借りて、すっきり身体を整えるのも良いでしょう。
キャベツの全体の10%も占める芯の部分は、ついつい廃棄しがちですが、主に食用とする葉の部分と栄養を比較してみると驚きの事実が!
実は芯にはカルシウムやカリウム、リン、マグネシウムなどのミネラル類が、葉の倍以上含まれているんです。つまり栄養が一番詰まった部分。
栄養価だけでなく味わいの面でも最も甘みが強く、スープや煮込みの具材としてだし取りにも使えます。
硬いので包丁の刃先でそぎ切りにすれば、断面が増えて火の通りや味の染みこみがよくなるので調理しやすく、炒め物やサラダ、細かく刻んで餃子やチャーハンに入れるなど、さまざまなアレンジができます。
うまみをアップして料理を美味しく、栄養豊富で体に嬉しく、しかもゴミも減って地球に優しい…。捨てるにはもったいないキャベツの芯にも注目して、ぜひ料理に活用してみてはいかがでしょうか?
ちょっと意識するだけで料理の仕上がりが変わる、キャベツの調理法について。
まずは切り方。
キャベツを切る時は「繊維を意識すること」がポイント。
特に繊維が太くて厚みのある外葉などは、葉脈を切るとアクと共にキャベツ独特の青臭さが出てしまい残念。まずは葉脈と葉脈の間に包丁を入れ、繊維に沿って切った後、繊維を断ち切ってサイズを揃えればOK。
また柔らかい葉であれば、葉脈の間を手でちぎるのもおすすめ。アクが出にくく、甘みを引き出すことができます。
さあここからは、キャベツを3つの部位に解体していきましょう♪
まずは外葉を3枚ほど手でむいた後、軸を包丁で切り落として、芯をくり抜けば解体の準備完了。あとは手を使って、葉が巻いている順に沿って、ゆっくり優しく外していきます。
濃い鮮やかな緑色の外葉からだんだんと黄色みがかった柔らかな葉が重なる中心部分に向かって、色と共に味わいや食感が別の野菜!?と思わせるほど変化しますよ。
まずキャベツの量を一度に沢山入れないこと。
軸の硬い部分から炒めはじめ、時間差で葉を投入。全体に油が回ったら、あまりいじらずに強火で一気に仕上げると、シャキッと美味しい炒め物に。焼きそばなども同様に。
甘酢漬けや温サラダなど半生で食べたい時は、ゆですぎると臭みが出てしまうので、あくまで葉の色が変わる程度にさっと。沸騰したお湯に表面から入れて両面30秒ほど、緑色が鮮やかになったら、すぐにざる上げして冷ましましょう。
白くて太い軸を切り落とし、せん切りにしやすいように半分に切った葉を2~3枚重ねて、端からくるくると巻きます。繊維に沿って包丁を入れるとシャキシャキに、より細く切るとふわっとした食感も同時に楽しめます。
切ったキャベツが浸るくらいの冷水に1分ほどさらすとパリッと感が増し、付け合わせなどに最適。ただし、キャベツに含まれるビタミンCなどの水溶性の栄養が流れ出てしまうので、さらし過ぎには注意。
すぐに食べきれない時は水気をよく切って、ペーパータオルを敷いた密閉容器に入れて冷蔵庫で保存しておくと、美味しさが長持ちします。
真冬の冷たい空気にじっと耐え、甘みが増した寒玉キャベツを満喫した後には、まるで暖かな春の陽射しにほぐれたかのように、ゆるっと巻いたみずみずしい春玉キャベツがお待ちかね。
季節の移ろいを愛おしみながらキャベツを食べると、より美味しさが増すかもしれません。
筆者
土田 美緒
料理研究家/野菜ソムリエプロ/調理師
レストランの厨房に立ち日々食材に触れながら、「Enjoy Vegetable!おいしく・楽しく・続ける」の活動コンセプトのもと、野菜や果物の摂取量の底上げが体と心の健康を保ち、社会の良い循環を生むと信じて料理教室、レシピ提案、実演販売など幅広く活動中。
さっと気軽に作れてお酒がすすむ野菜のおつまみ【酒菜—さかな】の紹介や、お酒×野菜のペアリング提案を得意とする。