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【コラム】栄養も満点!香りと食感を楽しむセロリ

【コラム】栄養も満点!香りと食感を楽しむセロリ

コラム

国産のセロリは、爽やかな香りとシャキシャキとした歯ごたえが特徴。
サラダなどの生食はもちろんのことスープや煮込み、天ぷらやフリッターなど揚げても美味しく、または肉類の臭いを消して料理にコクを出し、味を引き立ててくれるなど使い勝手のいい香味野菜です。
これから5月にかけて旬のピークを迎え、香りと食感のバランスが良くみずみずしい味わいのセロリを存分に楽しむ方法をお伝えします。

セロリのあれこれ

セロリの原産地は地中海沿岸、あるいはインド周辺と諸説あり、古代ローマ時代には薬草や魔除けなどにも使われていたそうです。
そんなセロリが日本に渡って来たのは16世紀末。豊臣秀吉の命を受けて朝鮮へ出兵した加藤清正が、中国種を持ち帰ったのが始めとされ清正人参と呼ばれるように。

また、現在で一般的に栽培されているセロリに近いものは、オランダ人が長崎に持ち込んだ西洋種でオランダ三つ葉と呼ばれていました。
欧米では葉だけでなく茎全体が緑色で香りの強いグリーンセロリと呼ばれる緑種が主流で、古くから煮込み料理やスープのベースとして使われていたものの、日本に持ち込まれた当初は香りが強いため食用としては普及しませんでした。
しかし戦後から欧米の食文化が入ってきたことで需要が増え、本格的に栽培されるようになりました。
一般的に出回っている、ほどよい香りがあって肉厚で薄緑色のものはコーネル619と呼ばれる中間種、他にも白色種で水耕栽培された葉三つ葉のようなホワイトセロリや東洋在来種の芹菜(きんさい)、かぶのように根茎を食用とする根セロリとも呼ばれるセロリアックなどもあります。

主な生産地は11月〜5月にかけて静岡県産の「冬春セロリ」、それ以外の時期は長野県産の「夏秋セロリ」が出回り、産地をリレーしながら周年供給されています。

セロリの生産量ランキング(都道府県別)

総生産量 29,500 単位:t 
順位都道府県収穫量構成比
1位長野県12,00040.7%
2位静岡県5,71019.4%
3位福岡県3,31011.2%
4位愛知県2,8309.6%
5位香川県1,0103.4%

データ:農林水産省「作況調査」(令和2年)

鮮度の見分け方&美味しさをキープする保存法

まずは葉。鮮度が落ちると、葉が黄色く変色してくるのでツヤとハリがあり、みずみずしく柔らかいものを選びましょう。
次は茎。茎は白くて太く、肉厚でどっしりしているものが良品です。表面に傷があるものや、根元の内側がひび割れていないかも確認。大きいものは、成長しすぎなどで内側が割れて亀裂が入っていないか断面もチェックして、切り口にスが入ったものは硬いので避けましょう。

セロリの長持ちのコツは、すぐに葉と茎を切り離すこと!
葉の部分から栄養分を奪われやすいので、葉と茎を切り離したらそれぞれラップに包むか、ビニール袋に入れて野菜室に立てて保存。
劣化しやすいのでなるべく早く食べ切るのが一番ですが、葉と茎をそれぞれ使いやすくカットして冷凍すれば1ヶ月ほど保存が可能です。
使う際は解凍せずにそのままスープや煮込みに、葉は薬味のように使えて便利です。

香りを味方につけて料理を美味しく

にんじんや三つ葉などと同じセリ科のセロリ。その独特な香りは好き嫌いが分かれるところでもありますが、この香りに含まれるアピインというポリフェノールには、不安やイライラを鎮める効果、食欲増進や安眠作用があることがわかっています。
また葉の部分に含まれる香り成分のピラジンには血液をサラサラにし、血行促進や動脈硬化を予防する嬉しい働きも。

特に葉や細い茎の部分は香りが強いので、くず野菜と一緒にブーケガルニ(香草の束)として煮込んでスープを取る時や蒸し魚をする時などに利用すると、ワンランクアップした風味が楽しめます。
もし余ったり食べるのが苦手な方は、布の袋などに入れて手で少し揉んでからお風呂に入れると、セロリの精油成分の効能により冷え性の改善が期待できる、といわれているのでぜひお試しください。

実は栄養満点のセロリ

重量の約95%が水分でできていて優しいグリーン色をしたセロリは、何となく栄養が少ないのでは…というイメージを持たれるかもしれませんが、実は茎も葉も栄養たっぷり!

セロリに豊富に含まれる代表的な栄養成分がカリウム。細胞内のナトリウム量を調整し、過剰な塩分を排出するので、むくみの解消や高血圧の予防・改善に役立ちます。
また生活習慣病の予防や美肌づくりに欠かせないビタミンC、体の維持機能や疲労回復に欠かせないビタミンB1やB2、皮膚や粘膜を保護したり眼の機能を正常に保つβカロテン(ビタミンA)なども含まれています。

そしてセロリのカロリーは、可食部100gあたり15kcalとヘルシー。腸内環境を整える食物繊維も含まれており、噛みごたえもあるのでダイエットにもおすすめです。
前述の香りだけでなく栄養の面でも、ビタミン類や食物繊維が葉の方に豊富に含まれており、βカロテンは茎の2倍含まれているそう。ぜひ葉も活用して、セロリの栄養を丸ごと摂取!美しく健やかな身体を目指しましょう。

セロリの美味しさをアップさせる調理法

さてここからは、セロリをより美味しく味わう調理法を見ていきましょう。

一枝ずつにわけてあるより株単位の方が長持ちするので、スーパーや道の駅などで見つけたら株ごと購入するのが断然おすすめです。
一番外側の茎は水分量が多くてみずみずしくジューシー。シャキッとした歯応えも楽しめるので、炒めたり煮たりと加熱するのに向いています。次に少し黄色がかった内側の茎は、食感が柔らかく筋も少ないのでパリッとそのまま野菜スティックにして生かじりしても◎。セロリの赤ちゃんにあたる一番内側にある芯の部分は、とても柔らかくあっさりとした味わいなので、和え物やサラダで他の食材と組み合わせても上品な風味を楽しめます。

セロリの株を分解

セロリを調理する際によく耳にする「筋取り」これって必要があるのでしょうか?
答えは切り方や料理によって変わってきます。みじん切りや斜めスライスなど薄く細かく切る時、また煮込みやスープなどのようにクタクタになるまでやわらかく加熱する場合は、筋を取らなくてもOK。
逆に、生のままサラダや和え物にする場合や大きく切ってサッと火入れする炒め物などの場合は、硬い筋が口に残って美味しさが半減してしまうので、筋取りをおすすめします。

筋取り(包丁) 筋取り(ピーラー)

筋は茎の下の外皮側に包丁を当てて起こし、手前に引くと簡単に取れます。筋が硬い場合は茎の上からも同様に行うと良いでしょう。
包丁が不安な方は、ピーラーを切り口に当てて皮をむくようにしても筋取りができるので、調理法に合わせて下準備をしておきましょう。

切る時は繊維の方向に注目。繊維に沿って縦切りにすると、よりシャキシャキとした食感を楽しめ、反対に繊維を断ち切るように斜め切りにすると、味が染みやすく口当たりも良くなります。

次にセロリの部位別のカットの仕方と活用法を見ていきましょう。

セロリの部位別のカット

①セロリの葉

香りが強いので肉や魚の臭み消し、料理の香り付けに使える。

  • 葉をそのまま
    • りんごやトマトとジュースやスムージーにすると飲みやすい。
    • 料理のあしらいとして。
    • 天ぷらなどにする際は、高温(170℃ほど)で手早く揚げるとベチャッとならない。
  • 5㎜幅にカット
    • 適度に食感と香りが引き立つので、炒めものや煮ものに加えてもアクセントになる。
    • ハーブのバジル代わりにガパオライスにしても、パクチー代わりにエスニックな料理のトッピングにしても美味しい。
  • 千切り
    • 下味用の香味野菜として活用。塩・こしょうをふり、酒と一緒に漬け込むと肉や魚に風味が移る。
    • スープの浮き身にしても色味が美しく、香りが控えめで食べやすい。
  • 葉のついた細い茎
    • 包丁で潰してさらに香りを引き出し、ブーケガルニとして煮込み料理に加える。
      他にパセリやタイムなどの香草を糸で束ねるか、お茶パックなどの袋に入れて加えると、さらに風味が良くなる。

②茎(上)の部分

上の方の若い茎は、比較的柔らかくて香りもほどよい。生食やさっと火入れした加熱調理に向く。

  • スティック状にカット
    筋取りをしてスティックサラダ、ピクルス、浅漬け、マリネなど。
  • 短冊切り
    繊維に沿って切るので歯応えを楽しめる。きんぴら、スープ、和えもの、炒めもの、パスタなど。
  • さいの目切り
    他の具材も同じ大きさにカットするとまとまる。ミネストローネスープ、スープの浮き身として。
  • 粗いみじん切り
    サルサソースやタルタルソース、マリネサラダ、他の香味野菜と一緒に食べるドレッシングにする。
  • 細かいみじん切り
    玉ねぎやにんじんなどと油で炒めて、香味野菜(ソフリット)として使用。

③茎(下)の部分

下の方の茎は繊維が太く硬め。長く火入れする煮込みや炒め煮などに向く。歯ごたえがあるので、オイスターソースやケチャップなど濃いめの味付けによく合う。

  • 斜め切りや小口切り
    繊維を断ち切るので食べやすくなり、火の通りも早い。サラダ、和えもの、スープの具として。
  • 乱切り
    食べ応えがアップする。炒めものに向いている。
  • そのまま
    ぬか漬け、味噌漬け、ポトフやシチューなどの煮込み。
セロリをカット

旬を迎えたセロリの清々しい香りで心や身体を癒しながら、余すところなく美味しく食べる♪
体の中からも外からも元気に、季節の変わり目をはつらつと過ごせますように。

筆者
土田 美緒

料理研究家/野菜ソムリエプロ/調理師
レストランの厨房に立ち日々食材に触れながら、「Enjoy Vegetable!おいしく・楽しく・続ける」の活動コンセプトのもと、野菜や果物の摂取量の底上げが体と心の健康を保ち、社会の良い循環を生むと信じて料理教室、レシピ提案、実演販売など幅広く活動中。
さっと気軽に作れてお酒がすすむ野菜のおつまみ【酒菜—さかな】の紹介や、お酒×野菜のペアリング提案を得意とする。

土田 美緒

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