皆さんは大根料理といえば、何を思い浮かべるでしょうか?ぶり大根、おでん、おろしそばなどなど、煮物からサラダまでいくらでも思い浮かべることが出来ますよね。
大根は使い方の多様性もさることながら、縄文・弥生時代から日本に伝来していたといわれる最古の野菜の一つであり、全国各地にその土地に根付いた品種が存在しています。
出荷量の多いおもな産地は北海道、千葉県、青森県などですが、加賀野菜の源助大根や京野菜の聖護院大根、神奈川県の三浦大根など、どれも個性が光る大根たちで冬の食卓を楽しませてくれます。
大根は葉の部分と根の部分で栄養価が異なります。葉の部分は緑黄色野菜で、βカロテンのほかカルシウムも多く含みます。一方で根の部分は水分量が多くてみずみずしく、ナトリウムの排出を助けるカリウムが豊富です。
出典:日本食品標準成分表(2020年版)八訂
表内にはありませんが、根の部分に含まれる消化酵素にも注目です。酵素は熱に弱いので、生で食べる大根おろしがもっとも効果が期待できる食べ方であり、それぞれの特徴をみていくと理にかなっていることがわかります。
デンプンの分解酵素です。消化を助けて胃もたれを防ぐ効果が期待できます。大根おろしをお餅にからめるからみ餅やおろしそば、おろしうどんなどが代表例です。
脂肪分解酵素です。よっておろし和風ハンバーグや鶏の唐揚げのみぞれ和えは、味のバランスはもちろんのこと、栄養素の組み合わせとして優秀であることが分かります。
それでは大根の部位別の特徴を追いながら、丸ごと一本の活用術をご紹介していきます。
葉付き大根は、すぐに葉と根を切り離して別々に保存します。大根の葉はかぶと比べて繊維質が固く苦味が強い場合もあるので、サッと下茹でしてから刻み、菜めしや油炒めなどに使います。
青首大根の場合はまさに“青い”部分となります。甘味が強くサクサク感があるので、スティック状や薄くスライスして生で食べるのがおススメです。かいわれ大根と合わせた親子サラダなどいかがでしょうか。
うま味と甘味が強く、形が揃いやすい部分でもあるので煮物向きです。煮物にするときは、浅く十文字の切り込みを入れて下茹でしておくと、味がよく染みこみます。
煮物以外では、バター醤油で仕上げる大根ステーキも料理教室では人気メニューです。
比較的辛味が強いので大根おろしにピッタリですが、新鮮な大根はそれほど辛味に差がない場合も多いので何に使ってもOKです。もし余りそうなときは、大根おろしを小分けにして冷凍保存しておくと便利。すぐに大根おろしを食卓に添えることができます。
大根の主流は全体が白色で葉に近いところがうっすらと緑色をした青首大根で、これまで見てきたように部位によってさまざまな楽しみ方が出来るのですが、ここからは“色”が美しい品種の魅力に迫ってみたいと思います。
皮が紫、中は紫と白のグラデーションの紅しぐれ、甘味が強くて皮の緑と中のピンク色のコントラストが美しい紅芯大根、全体が緑色でサクサクとした食感のビタミン大根、そのほかにも黒大根、赤大根など“カラフル大根”と呼ばれる品種が多数あります。
カラフル大根は加熱すると色が弱まったり、変色するものも多いので、生食での活用を3つご紹介します。
カラフル大根を1センチ程度の角切りにして、クリームチーズやスモークサーモンと重ねて刺します。とても簡単でカラフルな前菜になります。
大根おろしと餅はそのまま合わせても好相性ですが、カラフル大根のおろしで作ると一気に華やかになります。すりおろした大根をザルにあげて少し水気を切り、しょう油少々とかつお節を混ぜたものを柔らかくしたお餅にからめるだけですが、ちょっとしたおもてなしにもなります。
縦に切った大根をスライサーで薄く半円状にカットし、塩少々をまぶします。しんなりしたらペーパーで水気をふいて、小さく丸めた酢飯に巻いていきます。ラップで包んで落ち着かせたら出来上がり。こちらもパーティーメニューの一品に重宝します。
どれもシンプルな使い方ですが、色を活かすことで、さらに大根の魅力が引き立ちます。
ですが、そういっても全て生食で使うのは、大変な場合もあります。生食で楽しんだ後に余った大根は、お鍋の仕上げに薄切りで入れたり、しゃぶしゃぶにしてみましょう。短時間の加熱であれば変色を抑えることができますので、お鍋のアクセントにもなりますね。
まだまだ寒い日が続きますが、大根をフル活用して元気に過ごしてまいりましょう。
筆者
高崎 順子
農学部卒業後、食品メーカーでの商品開発、食マーケティングを担当し、2014年に野菜ソムリエ上級プロの資格を取得。30年以上野菜一筋の生活を送る。
現在は、企業や自治体のセミナー講師、各種料理教室を開催しながら、「親子横浜野菜キッチン」を主宰し、子どもとファミリーに向けた食育活動に力を入れる。「野菜で伸ばす、生きるチカラ。」がモットー。