つやつやの表面と切った時にしたたる果汁。洗いやすさ、切りやすさ共に抜群の野菜“ズッキーニ”が旬をむかえています。緑や黄色の細長タイプの他、丸型もあって模様もさまざま。
今回は人気上昇中のズッキーニの魅力にせまっていきましょう。
使いやすさNo.1 新定番野菜のズッキーニ
ズッキーニが日本で本格的に栽培され始めたのは1980年代といわれています。以前はなじみが薄い野菜でしたが、今では野菜売り場でもレストランでも目にとまることが多くなってきました。
実際、ズッキーニの生産量は年々伸びています。
古くから栽培されている多くの品目がある中で、比較的新しい野菜が生産量を増やすのは珍しいこと。最近出始めているイタリア野菜達は味に特徴的なものが多く、一般の生活者にとってはハードルが高い一方で、ズッキーニのクセがない味わいと洗うだけですぐに使える使い勝手の良さは際立っています。
よって私が初夏に開催する料理教室では、必ず使う野菜の一つであり、評価もとても高いです。
旬は初夏でも暑さは苦手?
原産地はアメリカ南部とされていますが、その後に伝わったイタリアで品種改良が進み、現在の細長いタイプが広まったようです。
日本では初夏に多く出回りますが、実は猛暑が苦手。国内での産地シェアをみると長野県がトップで2位は宮崎県と、この2県で5割以上を占めています。比較的、冷涼な長野県では夏場がメイン、宮崎県は冬場~初夏の施設栽培が中心になるなど、産地リレーがなされています。
出始めの「走り」の時期は、皮が特にやわらかいので、傷つけないようにやさしく扱います。つややかな表面を維持するためにも、乾燥は禁物です。購入後は新聞紙等に包んで冷えすぎに注意し、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
バランスの良い栄養価と食べやすさに注目!
見た目はキュウリに似ていますが、ズッキーニはカボチャの仲間でペポカボチャの一種です。完熟してからの収穫ではなく、開花後1週間以内の未熟果を収穫します。
西洋カボチャのβカロテン量のように、突出した栄養価は見当たりませんが、カリウムやカルシウム、βカロテンなど各種ビタミンやミネラルを含んでいます。
キュウリと同じく「あまり栄養がない」と思われがちですが、調理がしやすく一度にたくさん食べることができる、という長所があります。
よって日頃の野菜不足を解消するのに役立つだけでなく、食卓バリエーションを豊かにするのに最適な野菜といえます。
生でも加熱でもOK!無限大の調理性
用途が幅広いズッキーニの調理性を深掘りしていきましょう。
●生でサラダに
新鮮なズッキーニは生で食べられます。ヘタとお尻部分を除いて、皮も種も丸ごと全て食べることができます。細かくカットしてチョップドサラダに、ピーラーで引いてリボン状の形にしても映えますね。
●生で食材を巻いて
ピーラーで引いたズッキーニの応用編。表面に少し塩をしてしんなりとさせ、水分を拭いてから食材をくるみます。生ハムやチーズ、スモークサーモンを巻いてもよいですし、軍艦巻きの海苔代わりとして使うと、彩りが美しい野菜寿司が作れます。
●極薄切りでカルパッチョ
縦長のピーラーではなくスライサーで極薄の輪切りにすると、美しい円形を生かしたカルパッチョを作ることができます。クセがないため、魚介類と合わせるとサッパリとした一品になるでしょう。
こちらの写真はタコの薄切り・いくらと合せています。
●油との相性抜群の炒めもの
火が通りやすいだけでなく、適度な歯ごたえがあるため油炒めに向いています。油の吸収がよいため、油の量に注意して仕上げます。1センチ程度の輪切りにした焼きマリネは、保存もできてオススメです。
●形を生かした「ズッキーニボート」
縦半分にカットするとボート上に使うことが出来ます。中の実をスプーンなどでくり抜き、細かくカットしてツナやチーズと合せてボートの中に戻したら、トースターやフライパンで火を通します。
こちらの写真は、トマトの輪切りとサラミを散らして焼いています。カラフルで野菜感があるおつまみになりますね。
季節が進み「名残」となったズッキーニは、巨大化したものや皮が固くなっているものを見かけることがあります。その場合は定番のラタトゥイユなど、煮込み料理やスープに使いましょう。
切った表面に少し塩をして、出てきた水分を拭き取って、アクや雑味を除くと仕上がりがよくなります。
丸ズッキーニは食べられる「器」として活用
丸型のズッキーニが手に入ったら、ぜひ「ファルシー」をお試し下さい。
フタにできるように、少し厚みを残してヘタをカットしたら、前述のズッキーニボートと同様に中の実をくり抜きます。くり抜いた実はカットして肉味噌等と合せて戻し入れ、ピザ用チーズを振ってオーブンで焼きます。
詰める前に外側の「器」となる部分をあらかじめレンジ加熱して少し柔らかくしておくと、焼き上げたときに皮の付近まで一体感が出て美味しく召し上がれます。
専門店で注目される「花」
ズッキーニは花が食べられる野菜として有名です。雄花と雌花があり、どちらも食べられますが雌花は下にベビーズッキーニがついていますから、存在感抜群の仕上がりになります。
花びらの中にチーズやアンチョビを詰めて、フリットにするのが代表的な食べ方。チーズを直接包むと流れ出やすくなるため、花びらの内側に薄くピラフなどを敷いて、中にチーズを入れると揚げやすくなります。
以上、変幻自在のズッキーニの魅力をお伝えしてきました。
淡泊でクセがない味はどんな食材とも合せやすく、みずみずしさをプラスしてくれます。夏の食卓の彩りにぜひご活用下さい。
筆者
高崎 順子
農学部卒業後、食品メーカーでの商品開発、食マーケティングを担当し、2014年に野菜ソムリエ上級プロの資格を取得。30年以上野菜一筋の生活を送る。
現在は、企業や自治体のセミナー講師、各種料理教室を開催しながら、「親子横浜野菜キッチン」を主宰し、子どもとファミリーに向けた食育活動に力を入れる。「野菜で伸ばす、生きるチカラ。」がモットー。