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【コラム】夏の定番野菜トマト、本当は春が旬?

【コラム】夏の定番野菜トマト、本当は春が旬?

コラム

トマトの旬はいつ?

トマトの旬は「」と答える方が一般的に多いと思います。
しかしながらトマトは高温多湿に弱く、冷涼な環境の中、強い日差しを好む野菜です。ではなぜ、トマトの旬が夏とされたのでしょうか?
歴史を遡ると、日本で食用のトマト栽培がはじまった明治初期は、農具や温室などの設備が不十分でした。
日本の気候に合わせて育てるしかなく「春に種まきしたものは、夏に実がなる。」という構図が先に出来上がり、"トマトの旬は夏"となったようです。

トマトの旬

昭和40年以降の本格的な施設園芸(ハウス・温室)の普及とともに、日本でも原産地に近い、トマトの生育に適した環境を作ることが可能となりました。
今では種類豊富なおいしいトマトを一年中楽しむことができます。

とはいえトマトの旬が夏であることも間違いではありません。
湿度の高い夏のトマトは、水分をどんどん吸い、速いスピードで育ちます。
気温が高く、花が咲いてから赤く色づくまでの時間も短いため、実は大きく育ちますが春トマトのような濃厚さはなく、あっさりとした味わいになります。

これはこれで夏の太陽の味がして、もぎたてを丸かじりしたくなるような美味しさです。
水分が豊富なので、夏バテ予防の水分補給としても、優秀な働きをしてくれます。

日本におけるトマトの旬は「春と夏」と答えるのが正しいのかもしれません。

春トマトがおいしい理由

おいしい理由

トマトの起源と言われる中南米アンデス高原地帯の環境と、日本の春の気候・環境が似ているから、品質の高いトマトが育つと考えられています。

  1. 昼と夜の寒暖差がある。
    アンデス山岳地帯 4月・・・最高18℃/最低6℃
  2. 雨は降らないが、湿度はそれなりに高い。

原産地である太平洋岸からアンデス山脈に拡がる傾斜地は、雨が降らない無降雨地帯となっています。ですが太平洋の寒流で冷やされた空気が上陸して暖められ、水蒸気の保有力が高まり、ミスト(霧)がかかったような状態であるため、空気が極端に乾燥することはありません。

  • 乾燥気味に育て、水分ストレスを与えることで糖度の高いトマトができますが、水分がゼロの状態では美味しいトマトは育てられません。

トマトの種類

トマトの種類

主な種類として、ピンク色の桃太郎、お尻が鋭くとがったファーストトマト、糖度の高い中玉トマトの総称でもあるフルーツトマト、お弁当の彩りに欠かせないミニトマトがありますが、世界にはトマトの種類が8,000種類以上あると言われています。
私たちが一生をかけても出会えない数ですが、旬の時期には店頭に何種類ものトマトが並ぶので、手に入るものを食べ比べするだけでも新たな発見があります。
味の好みも人それぞれですが、特徴が分かると料理によって使い分けることもできるようになるので、よりトマトのおいしさを楽しめるのではないでしょうか。

トマトのゼリー部

また、トマトを切ってみると分かるのですが、ゼリーの入り方や量も異なっています。
このゼリー部にうまみ成分の「グルタミン酸」が果肉よりも多く含まれているので、知らずにゼリー部をくり抜いて捨ててしまうのはとても残念です。

このうまみ成分は肉、魚、チーズ等に含まれる「イノシン酸」との相乗効果でさらにアップするので、トマト消費量の多い国(地中海沿岸の国々)の料理を参考にすると、レシピが浮かびやすくなるかもしれません。

トマト消費量の多い国の主な料理

ムサカ(エジプト、ギリシャ、トルコ)
ひき肉と野菜を交互に重ねてトマトソースをかけて焼いたもの。ヨーグルトや卵を加えるアレンジもある。
ガスパチョ(スペイン)
完熟トマトにキュウリ、玉ねぎ、ニンニク、ピーマン等を加えて作る冷製トマトスープ。バケットやチーズを添える。
カプレーゼ(イタリア)
トマト、モッツァレラチーズ、バジルを交互に並べたサラダの一種。カプリ島発祥と言われている。
  • イタリア料理はパスタ、ピザ、リゾット、煮込み料理など、ありとあらゆるメニューにトマトが使われています。

トマトの保存

低温障害を起こすので冷やし過ぎに注意しましょう。
実がブヨブヨとやわらかくなり、食感も悪くなり風味を損ないます。

1つずつペーパータオルに包んでポリ袋に入れ、ヘタを下にして野菜室で保存するのが理想的です。
(または新聞紙に包み、ヘタを下にして、14℃以下を保てる冷暗所で保存。)

冷凍保存する場合

冷凍保存

ジッパー付き保存袋に入れて、

  • トマトソースにしてから冷凍保存。
  • ざく切りにして冷凍保存。
  • ヘタを取り、丸ごと冷凍保存。

フレッシュトマトの食感や風味は無くなりますが、解凍なしでパスタソースや煮込み料理などの加熱料理にすぐに利用できます。

筆者
清野 朱美

作り手の"想い"と自然が生み出す野菜の美しさに魅了され、2012年に野菜ソムリエの最高峰資格「野菜ソムリエ上級Pro.」を取得。
調理師やベジフルビューティーアドバイザー等の専門知識を活かし、美と健康を叶える野菜レシピを、TV番組や料理教室などから発信中。
2014年12月、野菜&果物の"機能性"に焦点をあてた初のレシピ本「KINOH Vegetable & Fruit Recipe Book」を執筆及び監修。
趣味は野菜をテーマに旅すること。

清野朱美

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