ニュース

【コラム】夏野菜のトップバッター!栄養満点の健康野菜、旬の味わいを楽しむピーマン

【コラム】夏野菜のトップバッター!栄養満点の健康野菜、旬の味わいを楽しむピーマン

お知らせ

一年中店頭に並び、そのお求めやすい価格と料理のバリエーションの広さから、食卓の強い味方としておなじみの野菜。
本来はこれから夏に向けてが旬真っ盛り。6月に走りのみずみずしくて柔らかいピーマンが出回り、収穫量と味わいのピークを迎える7月、名残の8月になると水分量が減り、皮がパリッと張って香りもより濃厚に。時期によって味わいが変化するのもピーマンの特徴です。
不名誉にも子供の苦手野菜NO.1とも言われたりしますが、近年は改良が進んで苦味の少ない品種も開発されたり、カラーピーマンなどバリエーションも豊富なのでずいぶんと食べやすくなっています。
暑い夏に必要な栄養をたっぷり含んだピーマンを、存分に味わう方法をお伝えします。

ピーマンのあれこれ

ナス科トウガラシ属、唐辛子を意味するフランス語「Piment(ピマン)」が名の由来とされるピーマン。原産地は中南米の熱帯地方。大航海時代にコロンブスによって唐辛子がヨーロッパに伝わり、その後唐辛子が改良され、辛みのない甘味種のピーマンが誕生しました。

シシ型」「ベル型」「シシトウ」の3つの形に分けられ、「シシ型」のピーマン、「ベル型」のパプリカ、「シシトウ」の獅子唐辛子は同じ仲間。
唐辛子にはピーマンやパプリカのように辛みを感じず、ふっくらとした形をしたグループと、獅子唐辛子や万願寺とうがらしのように、形は唐辛子でもそれほど辛味がない甘唐辛子の仲間、そして辛い唐辛子の3つのグループがあります。

日本へは16世紀にポルトガル人によって、辛味のある唐辛子が渡来して江戸時代に普及。一方のピーマンは明治時代初期に伝わりましたが、一般家庭には第二次世界大戦後に広く普及しました。

ピーマンの仲間

普段私達が食べている緑色のピーマンは、未熟な状態で収穫されたもので、そのまま収穫せずに完熟すると、中に含まれる「カプサンチン」という赤い色素が増えて赤くなります。
茨城県、宮崎県、高知県、鹿児島県、岩手県の5県で全国の出荷量の7割を占めています。冬春ピーマンは茨城県や宮崎県、高知県などで主にハウス栽培で生産され、夏秋ピーマンは茨城県、岩手県、大分県、北海道などが主要な生産地となっています。

ピーマンの生産量ランキング(都道府県別)

総生産量:143,100単位:t 
順位都道府県収穫量構成比
1位茨城県32,50022.7%
2位宮崎県26,80018.7%
3位高知県13,0009.1%
4位鹿児島県11,8008.2%
5位岩手県8,2305.8%

データ:農林水産省「作況調査」(令和2年)

ピーマンの兄弟のような存在、パプリカの魅力

パプリカ(赤・黄・オレンジ)

外観、食味、栄養価の3拍子揃った野菜として定着しつつあるパプリカ。
ピーマンと比べるとサイズが大きく、肉厚でジューシーな大型種です。1990年代にオランダから輸入したのを皮切りに、日本でも流通。現在では韓国産が8割近くを占めますが、宮城県や茨城県など国内でも栽培が行われています。

果実の色は、白色種以外は未熟果では緑色をしていますが、完熟すると品種によって、赤、黄、オレンジ、紫、白、茶、黒などカラフルな色に。
ちなみに紫、茶、黒色のパプリカは加熱すると緑色に戻るので、美しい色を生かしたいときは生食がおすすめ。色によって風味も異なり、赤は爽やかな酸味、甘味が強い黄色、バランスの良いオレンジは特に人気です。
ピーマンと同様に栄養価が高いのもポイントで、特にビタミンCは2倍以上含まれています。苦味や青臭さがなく果物のような甘味もあるので、マリネ肉詰めなど、料理に合わせて使い分けると良いでしょう。

美味しいピーマンの見分け方&保存法

ピーマンの良品

鮮度の良いピーマンの見分け方は皮とへたをチェック!果皮はハリとツヤがあり、肉厚なものが良品。
へたはピンとしていて茶色く変色していないもの、へたの周りが凹んで肩が盛り上がっているものを選びましょう。半割りにした際に、へたの下に種が詰まっているものは美味しい証です。

新鮮なうちに食べるのが一番ですが、保存方法次第では割と日持ちがする野菜です。
水分が多いとヘタの部分にカビが生えてしまったり、1つが傷むと他のピーマンも傷み出すため、まず水気をよく拭き取りましょう。
手間はかかりますが、ペーパータオルで1つずつ包んでポリ袋の口をふんわり閉めて保存すると、冷蔵庫の野菜室で1週間程度は鮮度をキープできます。

また生のままで使いやすいサイズにカットして冷凍すると、1ヶ月程度は保存が可能。繊維が壊れ、特有の苦味が感じにくくなるため、ピーマンが苦手な方でも食べやすくなる嬉しい効果も♪
保存容器に入れる際にラップなどで小分けにしておけば、使う分だけすぐに取り出せて便利。生のピーマンに比べるとシャキシャキ感は落ちるので、じっくりと火を通す煮込み肉詰めスープなどに使うのがおすすめです。

夏に嬉しいビタミン類たっぷり!特に赤ピーマンは栄養が格別

赤いピーマンの仲間

ビタミンCβ-カロテンビタミンEなどのビタミン類を多く含んだ栄養野菜ピーマン。
豊富に含まれるビタミンCは肌や骨、血管を健康に保ち、血中のコレステロールを下げる働きをします。
独特の青々しい香りは「ピラジン」という成分で、種やわたの部分に多く含まれています。血液をサラサラにする効果や脳をリラックスさせる効果も期待できるので、栄養を無駄なく取るためにも柔らかい走りの時期には、ぜひ炒め物や煮浸しにして丸ごと食べるのがおすすめ。

ちなみに色とりどりで目にも楽しいピーマンやその仲間達ですが、実は緑色で未熟なものに比べ、完熟している赤ピーマンはより栄養価が高く、β-カロテンは約3倍、ビタミンCは約2.2倍、ビタミンEは約5倍も含まれています。
また優れた抗酸化作用があるカロテノイドの一種「カプサンチン」も含まれており、動脈硬化やがんなどの生活習慣病の予防にも効果が期待できます。β-カロテンは脂質と一緒に摂ると体内への吸収率もUP!
炒め物や揚げ物など油を使う調理や、ごま油やオリーブ油、ツナのオイルなどで和えても効果的◎。

カラフルなパプリカも、緑のピーマンよりビタミンCやビタミンEが多いので、料理をする際に上手に組み合わせながら積極的に摂りたい野菜です。

旬のピーマンを美味しく食べ尽くす調理法

さてここからは、ピーマンを余すところなく楽しむ調理法について、まとめていきたいと思います。

下ごしらえのコツ

ピーマンは形が凸凹のため、そのままでは切りにくく、形やサイズが不揃いになってしまい火入れなどに差が出やすいです。ですが丁寧に下ごしらえをすることで、仕上がりに差が出ます。

解体の流れ

写真のように、

  1. 包丁のあごの部分でヘタを取る
  2. 上下を1㎝ほどカット
  3. 真ん中を開き、手で種を取る
  4. 包丁を寝かせて白いわたを削ぎ落とす

の流れで解体すると美しく、すっきりとした口当たりを楽しめます。

旬のピーマンの味わいの違いを満喫するコツ

最初にお伝えしたように、旬の走りは全体的にみずみずしくて柔らかいので「丸ごと」がおすすめ。だし浸しマリネなどにすると、ピーマンの味わいを丸ごとダイナミックに楽しめます。
また半割りにしてグリルにしたり、炒め物なども種と一緒に大ぶりにカットすると、よりピーマンの旨みを満喫できる一品に。
和え物などにする際は繊維に沿って縦切りにすると、みずみずしくシャキシャキとした食感を生かせます。
名残の時期になると皮が張って硬くなってくるので、種を取り、繊維を断ち切るように横にカットすると味染みも良く、柔らかく仕上がります。

いろいろなカット法

色々なカット法

では料理に合わせてピーマンをカットしていきましょう。 ピーマンの皮の部分は包丁が滑って切りづらいので、内側を上に向けてカットするとスムーズです。

●乱切り
走りは旨みの詰まった種付きのままカットするのもおすすめ、名残は硬くなるので取りましょう。よりシャキシャキとした食感や歯応えを感じやすく、オイスターソースなどで濃い味付けをした際にもピーマンの風味が負けないので酢豚回鍋肉エスニックなどの炒め物に最も適した切り方。
●細切り
走りは繊維に沿って縦切りにすると、シャキシャキ食感やみずみずしさを楽しめます。
千切りにして冷水にさらし、シャキッとさせたものを他の野菜と組み合わせてサラダなどで食べたり、さっと加熱して彩りを鮮やかにしたものを甘酢に漬けてさっぱりいただくのもおすすめ。太さを揃えたい時は、皮を下にして、手で平らに整えてから切ると◎。
より香りが豊かになる名残は、横切りにして少し水分を足しながらきんぴら風の佃煮などじっくり火を通し、柔らかく仕上げる料理に向く。
●角切り
さっと火入れをしてピーマンの食感や甘み、香りを楽しめるカット法。チャーハンオムライスハンバーグの具、ナポリタングラタンの具材など他の食材との絡みも良いので万能。みじん切りにすると、よりピーマンの個性が引き立つので、サルサソースドレッシングなどに変化させるのもおすすめ。
●輪切り
厚めに切ればピーマンが苦手な方や子供でも食べやすい肉詰めに、細切りにするとピザトーストサラダのトッピングなどさっと加熱で良い料理に向く切り方。マヨネーズなどでサラダ風の和え物にしたりしても目先と食感が変わって面白い。

火入れ前の下ごしらえ

火入れ前の下ごしらえ

生よりもさっと火を入れた方が甘みが増し、熱にも強いビタミンCや油と相性の良いβ-カロテンを豊富に含むピーマンは組織がしっかりしているので、加熱調理向きの野菜ともいえます。
特に丸ごとや半割りなどで調理する場合は厚みがあり、火の入り方にムラが出やすいのでひと手間加えるのがポイント。

●丸ごと焼く場合
数ヶ所、爪楊枝で穴を開けておくと破裂せずにムラなく火が入ります。
ちなみにピーマンやパプリカをマリネにしたい時の皮のむき方にもコツが。まずピーマンやパプリカをコンロや直火に当てて焦げるまで焼き、紙袋(もしくは新聞紙を袋状にしたもの)に入れて10分ほど蒸らす。冷えすぎるとむきにくいので、温かいうちに紙袋の上からゴシゴシすると手も汚れずむきやすいです。
●半割りの場合
5㎜間隔で表面に浅く切り込みを入れておくと、均一に火が入り、甘みも出ます。
グリルや炒める際は火が入りづらいので、少し水を足してフタをして、短時間で蒸し焼きにすると食感や色味など美味しく仕上がります。
ピーマンとピーマンの仲間

初夏の訪れをいち早く伝えてくれる夏野菜のトップバッター、ピーマン。
太陽をたっぷり浴びた露地物のピーマンを旬の時期に合わせて、調理法や味付けなど工夫しながら食べて、まもなくやってくる暑い夏を今年も健やかに乗り切りましょう。

筆者
土田 美緒

料理研究家/野菜ソムリエプロ/調理師
「Enjoy Vegetable!おいしく・楽しく・続ける」のコンセプトのもと、野菜や果物の摂取量の底上げが体と心の健康を保ち、社会の良い循環を生むと信じて、料理教室、実演販売、メニューやレシピ開発、コラム執筆など幅広く活動中。
外食向け青果・総合食材を扱う会社の社員食堂やビストロの厨房で研鑽を積み、素材の持つ味わいや季節感を大切にした「野菜が主役」の料理提案を得意とする。

土田 美緒

専用アプリ

無料ダウンロード

App Storegoogle play