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【コラム】主役になれる野菜!それがアスパラガス

【コラム】主役になれる野菜!それがアスパラガス

コラム

春野菜の代表格

アスパラガスを見かけると「春」を感じる方も多いのではないでしょうか。
栽培技術の進歩や産地リレーによって、旬に関係なく一年中店頭に並ぶ野菜が多い中で、アスパラガスは国産品の出回る時期が比較的くっきり限られています。
つくしにも似たフォルムですが、アスパラガスは「キジカクシ科」という、野菜にはちょっと珍しい仲間に分類されます。原産地はヨーロッパで、江戸時代後期の鎖国の頃にオランダ人によって長崎に伝えられたとされています。

アスパラガスの畑の姿

旬は春と夏の2回?!興味深い生育の特徴

アスパラガスは生育過程も少し珍しい特徴があります。
多年生であるため、10年ほどは繰り返しの収穫が可能ですが、植えたばかりの1~2年間は収穫をせずにを育て、3年目以降からようやく芽が育った若茎を収穫します。
下の写真を見ると畑から単独で芽が伸びたように見えますが、実は何年も生長した地下茎が地中にあって、それを元に春先に芽を出し始めるのです。

春~夏の「立茎」1 春~夏の「立茎」2

そして春の収穫が一通り終わる頃に、良い芽を残して立茎させます。
1ヶ月くらい経ってふさふさと生長してくると、その脇に今度は夏のアスパラガスが芽を出し始めます。よって、春アスパラガスと夏アスパラガスの2回の収穫期をもつ産地もあります。

アスパラガスの産地といえば「北海道」のイメージがあるかもしれません。
北海道は出荷量1位ではあるものの全国シェアは13%程度であり、主要産地は分散している傾向があります。
北海道の旬はやや遅く4月末~となり、早春は九州地域のアスパラガスから最盛期を迎えてきます。

アスパラガス全国出荷量シェア

(出典:農林水産省 2019年作況調査より)

「白」「紫」から「ロング」まで、広がる品種

3色アスパラガス

市場ではグリーンアスパラガスが大半を占めていますが、白や紫もあります。

ホワイトアスパラガスは「日光を遮る」という独特の栽培をおこないます。
紫アスパラガスは加熱すると退色して緑になってしまいます。甘みが強く柔らかい品種も多いことから、生食がオススメです。

ホワイトアスパラガスの生育

またグリーンアスパラガスに、太くて長い「さぬきのめざめ」という品種があるのはご存じでしょうか。この品種は全長が50センチになるものもある、超ロングアスパラガスです。
穂先が開きにくいため、長くてもしっかりと穂先が閉じていてみずみずしく、甘みも強いため近年人気が出てきました。
存在感抜群ですので、ぜひ試していただきたい品種の一つです。

さぬきのめざめ

アスパラガスは「例外的」緑黄色野菜の一つ

アスパラガスは、可食部100g中に約380ugのカロテンを含みます。
これは緑黄色野菜の基準である「カロテン量600ug」には満たないものの、摂取量や食べる頻度が多い野菜であることから特別に「緑黄色野菜」とされています(トマトやピーマンも同様です)。
また、名前の由来ともなっているアスパラギン酸を多く含んでおり、疲労回復効果が期待されますが、アスパラギン酸は同時に旨味成分でもあります。

若茎だからこそこだわりたい鮮度

このような栄養価と旨味を存分に味わうには、なんといっても鮮度保持が大切。若い茎の部分だからこそ劣化もしやすいため、上手に保存したいものです。

購入したアスパラガスは根元を少しカットしてみずみずしい状態にしたら、切り口に湿ったキッチンペーパーを巻くかカップなどに立て、さらに茎から穂先にかけてポリ袋をフワッとかぶせ(湿らせた新聞紙を巻いてもOKです)冷蔵庫へ。
この一手間がかなり効果的で、茎や穂先がしんなりするのを防ぐことが出来ます。
切り花のように根元を毎日少しずつカットして、新しい水に取り替えてあげるとさらによいでしょう。

保存の様子(根元のカット) カップに立てて保存の様子

シンプルに味わうなら、絶対「グリル」

ほぼ捨てるところがないアスパラガスですが、下準備として根元を少し切り落とし、皮が固そうであれば根元に近い部分4㎝程度を薄くピーラーで剥いておきます。

素材そのものの旨味と甘みを満喫するなら「グリル」がオススメです。
油をうすくひいたフライパンに並べたら、1~2分焼いて塩少々をふってフタをします。さらに1~2分蒸し焼きにしたら、穂先を最後に加えて仕上げます。
所要時間5分未満で歯ごたえ抜群のグリルが出来上がります。

アスパラガスのグリル

塩味だけでも充分においしいですが、卵との相性がとてもよいので、タルタルソースを添えたり、ポーチドエッグを乗せたりしても楽しめます。

タルタルソース添え ポーチドエッグ乗せ

茹でる場合は皮も一緒に活用

茹でてマリネ等に使う場合は茹ですぎに注意します。
また前述のように、ピーラーで剥いた皮は一緒に茹でて、茹で汁を出汁として使うこともできます。この場合は、茎を1分ほど茹でたら穂先を加えて火を止めて、好みの固さになるまで余熱で火を通します。

ホワイトアスパラガス茹で方

細長い姿を最大限に生かす

基本のグリルの応用編としては肉巻きがあります。
長い形状のため巻きやすく柔らかく仕上がる「豚バラ肉」でもいいですし、しゃぶしゃぶ用の薄切り肉3枚くらいを続けて巻いてもよいですね。アスパラガス1本を長いまま使うところがポイントです。

また、春巻きの皮で巻いて揚げ焼きにすると、皮のパリパリ感とジューシーなアスパラガスの食感のコントラストを楽しめる一品になります。
韓国海苔や生ハムを巻き付けてから春巻きの皮で巻くと、旨味と塩味が増して、ほかに味付けの必要はなく食べ応えも充分の仕上がりです。

アスパラ春巻き

独特の生育過程からその美しい姿と風味の活かし方まで、アスパラガスの魅力をお伝えしてきました。
ぜひアスパラガスを主役としてテーブルに並べて、春を満喫していただきたいと思います。

筆者
高崎 順子

農学部卒業後、食品メーカーでの商品開発、食マーケティングを担当し、2014年に野菜ソムリエ上級プロの資格を取得。30年以上野菜一筋の生活を送る。
現在は、企業や自治体のセミナー講師、各種料理教室を開催しながら、「親子横浜野菜キッチン」を主宰し、子どもとファミリーに向けた食育活動に力を入れる。「野菜で伸ばす、生きるチカラ。」がモットー。

高崎順子

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